Bitcoinを保有する企業の信用市場は100億ドルを超え、6月の売りで初の大きなストレスを受けました。優先株の急落、財務企業の資金調達再設計、AIインフラへの資金流入が重なり、Bitcoinを担保や準備資産として使うモデルの耐久性が試されています。
Bitcoin企業の信用市場では、StrategyやStriveが優先株を使い、普通株売却や通常の借入だけに頼らない資金調達を進めてきました。優先株とは、普通株より配当や弁済で優先される株式です。典型的には額面100ドル、固定または変動配当、満期なしという形を取ります。
Strategyは80万BTC超を保有する最大級のBitcoin保有企業です。同社の優先株STRCと、Striveの優先株SATAは、市場で大きな商品の一つになりました。STRCは配当を調整して100ドル近辺での取引を目指し、SATAは変動配当を日次で分配する構造です。
6月にBitcoinが6万ドルを下回ると、6月18日以降にSTRCとSATAは大きく額面を下回りました。借入でポジションを増やしていた投資家に追い証が発生し、売りがさらに売りを呼ぶ展開になりました。STRCは一時約75ドル、SATAは約88ドルまで下落しました。
その後、STRCは約87ドル、SATAは約97ドルまで戻しました。6月のSTRCとSATAの合計売買代金は100億ドルを超え、STRCが87億ドル、SATAが約15億ドルを占めました。配当は続き、流通市場も動き続けましたが、取引の多くは既存株の売買であり、発行企業への新規資金流入には直結していません。
StrategyはSTRCの年間配当を12%へ引き上げ、25.5億ドルの現金準備、優先株の買い戻し権限、一定条件下でのBitcoin売却余地を含む資本枠組みを示しました。この準備金は、優先株配当と利払いの約17カ月分をまかなう規模です。
売りの後も、StrategyとStriveはBitcoin保有を増やしました。6月にStrategyは3,625BTC、Striveは3,364BTCを純増させ、それぞれ約2億ドルを投じています。市場の論点は、Bitcoin保有への信頼そのものより、信用商品のレバレッジと新規発行の条件へ移っています。
日本では、Metaplanetが7月10日にBitcoinを裏付け資産または信用補完として使うトークン化信用商品(借入や債券に近い商品をブロックチェーン上で扱うもの)の共同研究を発表しました。相手先はSiiibo Securities、円ステーブルコイン発行体のJPYC、セキュリティトークンプラットフォームのProgmatです。MetaplanetはSiiiboを1,300万ドルで取得しており、保有Bitcoinは43,000BTCで、上場企業の保有量として3位です。
ただし、同構想には発行日、利回り、分配方法、最終構造がまだありません。実証実験を行うかどうかも未定で、投資家が指定Bitcoinに直接の法的請求権を持つかも明らかになっていません。
Adam Back氏が関わるBSTRの30,021BTC財務企業構想も、資金調達条件の再設計に入りました。Cantor Equity Partners IとBSTRは、2025年7月の当初条件では取引を完了しない方針です。7月8日のForm 8-Kでは、両社が事業統合の改定条件を協議していること、取引に連動した私募が完了条件ではなくなることが示されました。
当初案では、25,000BTCの売り手拠出に加え、PIPE(特定投資家に私募で株式などを引き受けてもらう資金調達)として4,156.11BTCと865BTCの株式拠出、最大15億ドルの法定通貨、5,021BTCの現物拠出が想定されていました。Cantor Equity Partners Iから最大約2億ドルも加わる構成でした。7月10日の株主総会は無期限延期となり、償還請求された公開株は返却される流れです。
Eric Trump氏と関係するAmerican Bitcoinも、Bitcoin保有増と株式市場の圧力が同時に進んでいます。同社は保有量が8,000BTCに達したと発表しました。2025年末の約5,401BTCから、2026年3月31日時点で約7,021BTCへ増えており、第1四半期には817BTCを採掘し、803BTCを購入しました。
同社は7月2日の市場終了後に1対15の株式併合を実施し、7月6日からNasdaqで併合後の取引が始まりました。株式併合は、15株を1株にまとめて1株あたり価格を引き上げる手続きで、企業価値や投資家の持ち分価値をそれ自体で増やすものではありません。
American Bitcoinは、Class A株の価格をNasdaqの最低基準に合わせることを主な目的に挙げています。6月22日のForm 8-Kでは、株主が1対5から1対40の範囲で併合を承認し、取締役会が1対15を選びました。
第1四半期の採掘売上高は約6,210万ドルでしたが、純損失は8,180万ドル、調整後EBITDA(利払いや税金などを除いて見る利益指標)はマイナス9,130万ドル、デジタル資産損失は1億1,720万ドルでした。採掘粗利率はBitcoin価格が前四半期比で約22%下がる中でも50%超を維持し、採掘コストは1BTCあたり約36,200ドルです。
同社は、併合後も授権株式数を変えません。発行済み株式は減りますが、将来発行できる株式の余地は相対的に大きくなります。Bitcoin保有量が増えても、株式流動性や将来の希薄化懸念が強ければ、財務企業としての評価は保有BTCだけでは決まりません。
Bitcoin財務企業の信用市場と並行して、短期国債を裏付けにするトークン化ファンドも、デジタル市場で担保として使われる資産群として拡大しています。Ondo Short-Term US Treasuries FundのOUSG(短期米国債を裏付けにするトークン化ファンド)は、7月10日時点で総額約4億724万ドル、年利3.45%、XRP Ledger(XRPL、XRP系のブロックチェーン)上で約2億2,207万ドル、Ethereum上で約1億8,517万ドルの構成でした。
OUSGは即時投資・償還の最低額を5,000ドルとし、適格投資家や適格購入者に対象を絞っています。保有内訳には、State Street Galaxy、BlackRock、Franklin Templeton、Fidelityの短期国債系ファンドが含まれます。
この分野では、トークン化が所有記録、移転、決済の操作層を変えます。一方で、投資家の法的権利は裏側のファンド構造や規制文書に依存します。残高が大きいことは商品化の進展を示しますが、ストレス時の流動性が十分であることまでは意味しません。
資金の競争相手として、AIインフラも存在感を増しています。AIクラウド企業CoreWeaveは2026年に200億ドル超の債務・株式資金を調達し、直近ではGPUを裏付けにした31億ドルのローンを終えました。同ローンはMoody'sがBa2、FitchがBB+を付けた信用商品です。
Bitcoinは2025年10月の12万6,000ドル近辺の高値から50%超下げています。一方、国際決済銀行は、上位5社のハイパースケーラーが2025年から2026年にAI関連設備投資へ1兆ドル超を使うと見ています。Bitcoin信用市場の次の焦点は、配当原資、新規発行条件、担保の法的構造、そしてAIへ向かう資金との競争に耐えられるかです。


