ステーブルコイン市場は5月のピークから約100億ドル縮小し、USDTとUSDCの供給減が目立っています。同時に、Circleの信託銀行承認や香港の制度整備が進み、ドル建て決済網と非ドル経路の競争が強まっています。
ステーブルコイン(法定通貨などに価値を連動させる暗号資産)の市場規模は、5月のピークから約100億ドル縮小しました。6月だけで77億ドル減り、ドル額では2022年5月のTerra-Luna崩壊以来の大きな減少幅です。
ただし、割合では約3%の低下です。2022年の暗号資産弱気相場では、主要ステーブルコインの時価総額が2022年3月の約1,660億ドルから2023年9月に約1,220億ドルへ下がり、26%超縮小しました。今回の動きは規模として目立つ一方、過去の危機時ほどの割合ではありません。
縮小を主導したのは大手発行体です。TetherのUSDTは5月の約1,900億ドルから約1,840億ドルへ減り、約60億ドルの減少です。CircleのUSDCは2026年3月の800億ドル弱から約730億ドルへ下がり、約70億ドル減りました。
一方で、競争は広がっています。Paxosが発行しRobinhoodなどが関わるGlobal DollarのUSDGは流通額が32億ドルを超えました。Anchorage Digitalと香港のOSL Groupが関わるUSDGOは約9億ドルへほぼ倍増しています。
Circleは7月10日、OCC(米通貨監督庁)からCircle National Trustの設立承認を得ました。正式名称はFirst National Digital Currency Bank, N.A.で、開業時の業務はCircleと関連会社向けのデジタル資産カストディ(資産を保管・管理する業務)です。
この承認は、商業銀行と同じ権限を意味しません。Circle National Trustは通常の預金、融資、当座預金、普通預金、FDIC保険付きの個人向け銀行サービスを扱えません。将来的には、限定された銀行や規制金融機関向けのカストディ、USDC準備金管理が検討対象になります。
Circleにとっての価値は、約733億ドル規模のUSDCを支えるインフラを連邦監督の枠内に置く点です。ただし、信託銀行の承認だけでUSDCの流動性や利用先が自動的に増えるわけではありません。発行体間の競争と流通網の確保が引き続き課題です。
IMFの作業論文は、ドル建てステーブルコインが固定相場制や厳しく管理された為替制度の国で外貨アクセスを改善する一方、通貨危機時には国内通貨からの退出を同時に促す可能性を示しました。利便性と通貨流出リスクの両面が、ドル建てステーブルコインの政策論点になっています。
香港では、暗号資産プラットフォームとインターネット証券会社に対し、2027年7月8日までに顧客ログインと端末登録でワンタイムパスワードを廃止する期限が設定されました。新しい認証はフィッシング耐性を持つ必要があり、パスキーや堅牢な端末ひも付けが想定されています。
このルールは、2025年のフィッシング被害を背景にしています。事業者は不審なログイン、新端末、通常と異なる取引、資金や暗号資産の引き出しを監視し、詐欺の兆候を見つけた時点で口座を制限する必要があります。弱い管理で大規模な不正取引を止められない場合、顧客損失への責任も論点になります。
同じ香港では、非ドル経路の整備も進んでいます。7月7日、北京と香港はオフショア人民元金融を強める一連の措置を打ち出しました。香港は中央金清算・決済システムの試験運用を始め、米ドル建て金先物を再開し、人民元建て金先物も検討しています。
HKMAの人民元業務ファシリティは2,000億元から5,000億元へ拡大し、7月10日に発効しました。Southbound Bond Connectの年間投資枠も8,000億元へ引き上げられました。ステーブルコイン市場の供給縮小は短期の流動性指標ですが、香港とCircleの動きは、決済網・準備管理・非ドル資産ルートの制度競争が同時に進んでいることを示しています。


