イタリアの名門サッカークラブ「ユベントス・フットボール・クラブ」を保有するアニェッリ家の投資持株会社エクソールは14日、ステーブルコイン最大手テザー社からの買収提案を正式に拒否した。エクソールCEOのジョン・エルカン氏がユベントス公式サイトにビデオメッセージを投稿し、「ユベントス、我々の歴史と価値観は売り物ではない」と宣言した。
エクソールは14日の声明で、取締役会が全会一致でテザー社の提案を却下したと発表した。同社は「第三者へのユベントス株式売却を一切考えていない」と明言している。
エルカン氏は珍しくビデオメッセージで直接語り、ユベントスのチームパーカーを着用して登場。「ユベントスは102年間、私の家族の一部であった」と述べ、1923年にエドアルド・アニェッリがクラブの会長に就任して以来続く、家族とクラブの深い絆を強調した。
テザー社は12日、エクソールが保有するユベントス株式の全て(発行済株式の65.4%)を対象とした全額現金による買収提案を発表していた。提案価格は1株2.66ユーロで、クラブ全体の評価額は約11億ユーロ(約2,003億円)。直近の終値2.19ユーロに対し21%のプレミアム価格だった。
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テザー社CEOのパオロ・アルドイノ氏は「ユベントスは私の人生の一部だった」と個人的な思い入れを強調し、取引完了後には10億ユーロ(約1,821億円)を追加投資する計画を明らかにしていた。
欧州の名門サッカークラブを傘下に収めることで、EU当局からの規制圧力が高まる中、大陸での信頼性を獲得しようとする戦略的意図があったとみられる。同社は既にユベントスの10%以上の株式を保有しており、第2位の株主となっている。
ユベントスはセリエAで最多36回の優勝を誇る名門クラブだが、近年は財務面で苦戦しており、約10年間年間純利益を計上できていない。エルカン氏は11月にもロイター通信のインタビューで、ユベントス株式を売却する意向はないと述べていた。

