世界中の金融機関に対してポストトレード業務のマーケットインフラを提供するDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)は、ブロックチェーン企業のDigital Asset(デジタルアセット)とデジタルアセットが手がけるCanton Network(カントン・ネットワーク)との提携を発表した。
この提携を通じて、DTCCの子会社であるDTC(Depository Trust Company)が保管する資産をカントン・ネットワーク上でトークン化する。これは、DTC保管資産をオンチェーンで利用可能にするというDTCCの広範な戦略における第一歩になるという。
DTCCはまず、DTCで保管されている米国債の一部をカントン・ネットワーク上でトークン化する予定。プロジェクトは2026年前半に、管理された本番環境でMVP(Minimum Viable Product:最小実用プロダクト)を立ち上げることを目指しており、その後数カ月かけて、顧客の関心度に応じてプロジェクトの規模や対象資産を拡大する計画だ。トークン化には、DTCCの「ComposerX」プラットフォーム群が活用される。
今回の提携発表は、DTC保管のRWA(現実資産)をトークン化する新サービスの導入・運営に関して、SEC(米証券取引委員会)からノーアクションレターを最近受領したことを受けたものだ。
DTCCのCEOであるFrank La Salla(フランク・ラ・サラ)氏は、「デジタルアセットとカントン・ネットワークとの提携は、業界全体で協力し、従来の金融エコシステムとデジタル金融エコシステムをシームレスにつなぎ、比類のない拡張性と安全性を提供するデジタルインフラを構築する上で、戦略的な前進だ」と述べた。
オペレーションおよび財務効率の向上に期待
トークン化証券の発行により、主要なマーケットメーカーやヘッジファンドを含む市場参加者全体のオペレーション効率と財務効率が、大幅に向上すると予想されている。また、プロセスの簡素化、オペレーションリスクの低減、資本効率の向上は、バランスシートにプラスの影響を与えることが期待されている。
さらにDTCCは、カントン・ネットワークの分散型ガバナンスにおいて主導的役割を担い、Euroclear(ユーロクリア)と共にCanton Foundation(カントン財団)の共同議長に就任する予定。これにより、DTCCは分散型金融インフラの業界標準策定に積極的に関与することが可能になる。
なお8月には、デジタルアセットと複数の米大手金融機関が、カントン・ネットワーク上でトークン化米国債の初のリアルタイム、完全オンチェーン取引を実行した。この取引にはDTCCも参加していた。
|文・編集:廣瀬優香
|画像:Shutterstock
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