●BTCは弱気寄りのレンジ局面で、反発余地はあるが上昇主導は弱い。
●2016年と異なり、2025年は高金利と市場成熟によりイベント効果が限定的。
●LTH優位・STH損失圏の構造で、下値は安定も上昇には需給改善が必要。
現在のビットコイン市場は、弱気相場の戻りを伴うレンジ局面に位置づけられる。短期的な反発余地は残されているものの、現時点で優勢なのは条件付きの弱気シナリオであり、上方向への持続的な推進力は限定的とみるのが妥当だ。
2025年は、トランプ大統領の就任を受けて、暗号資産に対する政策期待が意識されやすい年となっている。ただし、価格推移を2016年当選後と比較すると、市場の反応は明確に異なる。2016年は低インフレ・低金利環境下で流動性が拡大し、規模の小さかった暗号資産市場に投機資金が集中した結果、時間差を伴って強い上昇トレンドが形成された。一方、2025年初頭は高金利局面を経た後にあり、金融環境は依然として引き締め的だ。加えて、市場規模の拡大と参加者の成熟により、政治イベント単体では価格が大きく動きにくい構造へと変化している。
オンチェーンでは、LTH-SOPRとSTH-SOPRの比率が示す構造が、現在の慎重な市場姿勢を端的に表している。直近ではこの比率が低位で推移しており、長期保有者の売却は限定的である一方、短期保有者は損失圏での取引を余儀なくされている状況が続いている。過去のサイクルと照らし合わせると、こうした局面は急騰フェーズではなく、需給調整が長期化しやすい局面と重なりやすい。LTHが相対的な優位性を保ったまま、STHの売却が吸収される構造が続く限り、下値は支えられやすい一方で、上方向への主導的な動きは限定されやすい。
反対シナリオとしては、ETFフローが持続的な純流入へ転じ、同時に長期保有者の売却圧力が明確に鈍化するケースが挙げられる。現時点では「政策期待は存在するが、需給とフローは重い」という見方がベースシナリオとなる。ただし、これらの構造指標に明確な改善が確認される場合、この評価は見直す必要がある。
オンチェーン指標の見方
LTH-SOPR/STH-SOPR比率とは、長期保有者(LTH)と短期保有者(STH)の売却行動を相対的に比較する指標。市場内で「誰が優位か」を示す。比率が低い局面では、LTHは売らず、STHが損失圏で売却している構造を意味する。これは下値の安定を示唆する一方、主導的な上昇局面ではなく、調整フェーズに多く見られる特徴と解釈される。


