2025年のDAO(分散型自律組織)の活動は、2024年と比べて静かで集中化が進んだ1年となった。DL Newsと姉妹調査機関のDL Research、DefiLlamaが共同でまとめた報告書「State of DeFi 2025(DeFIの現状 2025年)」によると、主要なDAOにおける投票数やプロポーザル数は2025年に軒並み大幅に減少した。Aave(アーベ)、Uniswap(ユニスワップ)、Balancer(バランサー)、Frax(フラックス)、Arbitrum(アービトラム)といった主要プロトコルの分析では、提案数が前年比で60〜90%の落ち込みを見せ、参加者も激減したという。中にはLido(リド)のように参加者が増えた例もあるが、全体としては「ガバナンス熱」の冷え込みが明確になった。

この静けさは単に活動の低下を意味するのではなく、DAOの運営構造が変化していることも表している。報告書では、小口の参加者が離れ、投票権が大口保有者やプロのデリゲートに集約される動きが強まったと指摘している。この傾向は、従来の「分散」という理想とは対極にあり、プロによる効率的な意思決定へとシフトしていることを示唆している。

しかし、DeFi(分散型金融)全体として見ると2025年は別の意味で「勝利の年」だったと報告書は述べている。ブロックチェーンの利用コストが低下したことで、多くのアプリケーションが以前よりも革新的なサービスを打ち出しやすくなったからだ。特にEthereum(イーサリアム)の取引手数料は過去数年で大幅に低下し、取引数は増加傾向にある。これにより、アプリケーションレイヤーが手数料収益の大部分を獲得する構造に転換し、プロトコル間の競争が促進されたという。結果として、従来のUX改善やトークン価値向上の取り組みだけでなく、収益のユーザー還元やトークン買い戻しプログラムなど、トークンホルダーと収益を共有する動きが顕著になったことも報告書は強調する。こうした配当・還元モデルは2025年に3倍に増加しており、トークンがより「資産」として意識される要因になっている。

この1年を通じて、DeFiはDAOガバナンスの低迷という「表面的な静けさ」とは裏腹に、プロダクトの成熟や経済的インセンティブの再構築という深い進化を遂げたと評価できる。そして2026年を展望すると、報告書と市場関係者の見立ては重なる部分が多い。Coinbase Institutional(コインベース・インスティチューショナル)が指摘するように、永久先物、予測市場、ステーブルコイン決済といった領域が次の主要トレンドになると予測されているからだ。これは、DeFiが単なる投機の枠を越え、金融インフラ機能を担う方向へ進むことを示すものといえるだろう。

一方、DAOについては参加モデルの再設計やガバナンス参加インセンティブの改善が2026年の課題となるだろう。活発なコミュニティ主導の意思決定がなくては、真の意味での分散型ガバナンスは達成されない。そのためには新たな参加誘引策、例えば報酬設計の再構築や参加障壁の低減が不可欠となりそうだ。

総じて2025年は、DAOとDeFiがそれぞれに「静かな進化」を遂げた年だったが、2026年はそれらが、実需と成長の両面でさらなる成熟を見せることが期待される。

|文・編集:井上俊彦
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