● 株式市場ではCPI鈍化を背景にリスク選好が記録的水準へ回復している。
● 一方でBTCはCoinbase Premiumのマイナス継続など、米国現物需要の回復が未確認。
● BTCの上昇持続にはETF純流入の継続と現物主導の需要回復が必要条件となる。
直近6か月(2025年8月〜2026年2月)に「市場のリスク選好が記録的水準に達している」との見方がある。ただし、これは分解して考える必要がある。米国株のオプション市場では、ボラティリティが低く、コール(上昇を狙う取引)がプット(下落ヘッジ)を大きく上回る状態が続き、いわゆる“euphoria”と呼ばれる過熱指標も高水準にある。過去数年と比較しても、株式市場では強いリスク志向が確認できる。
一方で、暗号資産、とりわけビットコインでは状況が異なる。ETFフローは日次で流入と流出を繰り返し、価格の急落や流動性供給体の入出金停止といった信用ストレスも発生した。したがって、「すべての市場で一様にリスク選好が記録的」と断定するのは適切ではない。
株式市場の“特徴”は比較的わかりやすい。個別株では、上昇を狙うコール取引が約4年で最大水準まで増加している。さらに、S&P500指数が上昇する一方で、指数全体の予想変動率(1か月ボラ)はほぼ記録的な低水準にある。つまり、「市場全体は安定しているように見えるが、個別銘柄では積極的に上方向を狙っている」という状態だ。
この構造には理由がある。コール買いが増えると、オプションを売っている側(ディーラー)はリスク調整のために現物株を買い増す必要がある。その結果、株価上昇がさらに強まることがある。また、下落への備え(プット需要)が弱まると、相場はより楽観的な状態になりやすい。
この流れにマクロの追い風になりそうなのが、昨日発表された最新のCPIだ。CPIが前年比2.4%(前月2.7%から低下)、コア前年比も2.5%へ低下し、インフレ鈍化が示された。インフレ低下は一般に「実質金利上昇圧力の緩和→将来金利期待の低下→リスク資産に追い風」を通じてリスク選好を補強しやすい。少なくとも“インフレ再加速”という最悪シナリオの後退は、バリュエーション許容度を押し上げる方向に働く。
では、その追い風はビットコインにどこまで波及しているか。ここで重要なのは「米国の現物需要が戻っているか」である。添付チャート(Bitcoin: Coinbase Premium Index)は、Coinbase Premiumが直近でマイナス圏(約-0.09)に沈み、価格が6.88万ドル近辺まで下落した局面と整合している。Coinbase Premiumは、米国時間帯の現物買い圧力の強弱を示す代理指標として使われやすく、マイナスが持続する局面では「米国現物の需要回復が相場を押し上げる」状態よりも、「需要が弱く、反発が起きても定着しにくい」解釈が安全となる。
ETFフローも同様に、持続性の観点では未確定だ。直近では、流入の継続ではなく流入・流出の往復が目立つ。さらに、価格急落局面で入出金停止といった信用制約が表面化したことは、ストレス時にフローが逆回転しやすい構造を示唆する。従って、CPIでリスク回帰の条件が整っても、BTCが同じ強度でリスク選好の恩恵を受けるには「米国現物需要(Coinbase Premiumのプラス定着)」と「ETFフローの連続性」という追加の確認が必要になる。
30日先を「間違いになりにくい」形でまとめるなら、BTCは上昇トレンド断定ではなく“回復条件の検証フェーズ”に置くのが適切だ。観測点は3つに絞れる。
①Coinbase Premiumがゼロ近辺へ戻りプラス圏で定着するか、②ETFフローが流出連鎖を止め純流入が数日以上続くか、③反発局面でレバレッジ主導ではなく現物出来高(オンチェーンの売り圧沈静化を含む)が伴うか。これらが揃わない限り、マクロ追い風があってもBTCの反発は“持続性の確認”が優先される局面が続く可能性が高い。
オンチェーン指標の見方
Coinbase Premium Indexは、Coinbase(主に米国機関投資家)と他取引所の価格差を示し、米国現物需要の強弱を測る指標です。プラス圏は米国主導の現物買い圧力が強い状態を示し、上昇トレンドの持続性を支える構造を意味します。マイナス圏が続く場合は米国現物需要が弱く、反発が起きても定着しにくい需給環境を示唆します。
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