イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアムにおける「中立性」や「パーミッションレス」の意味について、2月17日に自身のXアカウントで見解を示した。 ブテリン氏は、自身の発言や価値観がイーサリアム全体の公式見解を代表するものではないと明確にしている。
ブテリン氏は投稿の中で、イーサリアムの利用にあたり、自身の政治的立場や考え方に同意する必要は一切ないと述べた。
同氏は、イーサリアムは特定の思想や価値観に従属しない分散型プロトコルであり、「パーミッションレス」や「検閲耐性」とは、誰の意見にも左右されずに自由に利用できると述べている。その一方で、創業者や開発者が特定のアプリケーションや価値観を批判する自由まで否定されるものではないとの考えも示した。
ブテリン氏の考えを整理すると、特定のアプリケーションを「好ましくない」と評する行為は検閲には当たらないという立場だ。あくまでも利用の自由と意見表明の自由は両立するものであり、プロトコルの中立性と、人間の価値判断や発言の非中立性は区別されるべきだという。
今回の投稿は、イーサリアムが単一の思想や世界観に属するものではない一方で、その上で何が構築されるべきかを巡る議論や批判が排除されるわけではないことを改めて確認したものといえる。
なお、このブテリン氏のスタンスを表明した投稿は、1月にかけてX上で交わされた一連の「インターネットの将来像」を巡る思想的な議論を背景にしたものとみられる。
発端の一つとして、起業家のトム・クルーズ(Tom Kruise)氏が1月1日に投稿した「2026〜2030年の予測」がある。同氏はその中で、インターネットが「open web」、「fortress web」、「sovereign web」の3類型に分断されていくとの見方を提示した。
「open web」は混沌としてボットが多く西側中心、「fortress web」は強い検閲を特徴とする国家管理型、「sovereign web」は暗号化と高い信頼性を軸にした小規模な空間として描写されている。同氏は特に「sovereign web」の重要性を強調した。
これに対しブテリン氏は1月10日、同投稿の内容に「およそ60%は同意する」とした上で、議論の焦点として「open web」と「sovereign web」を明確に分けて捉える必要があると述べた。この際同氏は、投稿者が「open web」と呼ぶものは実態として「corposlop web(企業最適化されたウェブ)」に近いとの認識を示している。「corposlop」について同氏は、(1)企業の最適化圧力、(2)洗練されたブランドによる「もっともらしさ」、(3)利益最大化のためにユーザーを軽視する行動、の組み合わせだと整理し、例として短期エンゲージメントを最大化するSNS、過剰なデータ収集、囲い込み型プラットフォームなどを挙げた。
ただし、この発言を巡っては、ブテリン氏個人の価値判断がイーサリアム全体の思想と受け取られかねないとの誤解が生じる可能性もあった。2月17日の投稿でも「corposlop」という言葉を用いて説明していたことから、こうした過去の投稿の誤解の可能性を否定する意図を持つものとみられる。
今回の投稿は、イーサリアムが特定の思想や世界観に回収されることを避けつつ、開発者個人が価値判断を語る自由をどのように位置付けるかという問題を改めて浮き彫りにしたものといえる。
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