● Tokenized Goldは「現物金の権利移転」をオンチェーン化し、超低コストで大口移転を可能にするRWAである。
● 市場規模は急拡大し、XAUTとPAXGが寡占する一方、出来高は高値圏で過熱傾向を示す。
● 成長の鍵は流動性と制度整備だが、発行体信用・償還条件・スマコン権限が主要リスクとなる。

金(現物)を金庫で保管し、その権利・請求権をブロックチェーン上のトークンとして表現する──これがオンチェーン上のゴールド(Tokenized Gold)だ。重要なのは「金そのものを動かす」のではなく、「所有権に近い経済的な権利の移転」をオンチェーンで行う点にある。だからこそ、超大型の移転でもネットワーク手数料は極小になり得る。実例として、Ethereum上で5,000 XAUt(約2,500万ドル規模)を送った取引でも、ガス代は約0.0035ドルという“桁違いの低コスト”が確認できる。

足元でこの市場は急拡大している。トークン化金は約20銘柄、合計時価総額は約60億ドル、2024年末から4倍超とも言われている。中でもXAUT(Tether Gold)とPAXG(Pax Gold)の2銘柄が大半を占め、寡占的な構造が進む。背景には、インフレ再燃や地政学リスクを意識した「守りの資産」需要に加え、暗号資産市場側でも“24/7で動く金”を求める資金が増えたことがある。

添付の「Tether Gold: Spot Volume Bubble Map」は、その熱量を端的に示す。価格が上昇トレンドに入った局面で赤いバブル(heating〜overheating)が連続し、直近の高値圏ではバブルが急拡大している。これは「価格上昇と同時に現物取引が膨らみ、参加者が増えた」サインである一方、短期的には過熱=急変動リスクも示唆する。金トークンはボラが低いと思われがちだが、流動性が薄い時間帯や取引所偏在があると、スポット主導で値が飛ぶ局面が生まれやすい。

特にXAUTはEthereum(ERC-20)に加えてTRON(TRC-20)でも流通し、低手数料チェーンでの送金需要を取り込みやすい。今後はRWAの波とともにマルチチェーン化が進み、「どのチェーンで、どの取引所・DeFiに厚い流動性があるか」が価格乖離(プレミアム/ディスカウント)を左右する。規制面では、投資家保護の観点から準備資産の分別管理、月次の第三者検証、償還ルールの明確化が求められ、制度整備が進むほど“信頼できる少数銘柄”への集中が強まる可能性が高い。

ただし成長の裏側には、オンチェーンでは解決できないリスクがある。発行体・カストディ・監査への信用、償還条件(最低数量や配送制約)、そしてスマートコントラクトの権限(停止・凍結・手数料変更・アップグレード可能性)だ。Tokenized Goldは「無リスクの金」ではなく、「金価格エクスポージャーに、信用と運用のリスクが上乗せされたRWA」と理解するのが現実的である。投資家にとっての要点は、金価格だけでなく「発行体の信用」「償還のしやすさ」「オンチェーン流動性」をセットで見ること。バブルマップの過熱が冷めた後も、構造需要が残るかが次の分岐点になる。

オンチェーン指標の見方

Tether Gold: Spot Volume Bubble Map:バブルの大きさは取引量、色は出来高の増減率を示し、資金流入の勢いを可視化する指標である。Coolingは出来高減少、Neutralは横ばい、Overheating/Highly Overheatingは出来高急増を意味する。高値圏で出来高だけが膨らみ価格が伸びない場合は、分配(Distribution)局面の可能性を示唆する。複数主要取引所のデータを集計し、2025年4月23日以降はHyperliquidも含めた総合的な需給指標となっている。

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